擁壁とは?種類や工事費用・トラブル事例をわかりやすく解説

この記事では、擁壁とは何かについて解説していきます。

注文住宅を建てるための土地探しをする上で、「擁壁あり」や「ガケ条例」というワードが備考欄に記載されているのを見かけることがあります。これらのワードがある物件は、一般的な物件よりも多額の費用がかかるおそれがあるため、注意が必要です。

この記事では、土地の擁壁について種類や工事費用、トラブル事例を解説します。擁壁とは何か知りたい人はぜひ最後までお読みください。

【この記事でわかること】

● 擁壁とは

● 擁壁の種類

● 擁壁に関連するトラブル事例

● 擁壁の注意点

擁壁とは?

擁壁とは、高低差がある土地において、土の流出や斜面の崩壊を防ぐための建造物のことです。

山を切り開いて造成された住宅地に見られる構造物で、安全に家を建てるために必要な壁です。

続いて、擁壁と土留めの違いについて解説していきます。

擁壁と土留めの違い

擁壁と同じようなケースで使われる言葉に「土留め」があります。

擁壁は土の流出や斜面を保護することを目的とした建造物であり、土留めとはこれらを建築するための工事そのものを指します。

つまり、擁壁は土留めをする上での選択肢の1つであり、土留めは建造物ではないことを知っておきましょう。

擁壁工事の主な種類

擁壁工事にはいくつか種類があり、見た目と耐久性に違いがあります。

  • 大谷石積み
  • 間知ブロック積み
  • RC造

順番に解説していきます。

大谷石積み

大谷石積みは加工した軽石を積み上げた擁壁ですが、耐久性が低いため、現在の建築基準法を満たせない建造物です。

大谷石積みは高度経済成長期によく利用される方法で、工事期間が短く費用が安い特徴があります。

ただし、近年多発する地震や洪水で破損する可能性が高いことから、大谷石積みを採用している土地は注意が必要です。

間知ブロック積み

道路などや公園に近接する工事でも採用されるのが、間知ブロック積みです。

ブロックを水平や垂直、斜めに組み合わせて設置することで崖部分を保護し、さらに低価格で施工できる特徴があります。そのため、多くの場所で採用されている方法です。

ただし、間知ブロック積みは大谷石積みほどではありませんが、耐久力が低いという欠点があります。

建築基準法の許可が下りても、ハウスメーカーによっては独自のルールで建築しないこともあります。そのため、間知ブロック積みの土地はハウスメーカーに事前確認してもらうのがおすすめです。

RC造

家を安全に建築するための擁壁工事として、RC造を採用するのが一般的です。コンクリートと鉄筋で構成されるこの擁壁は非常に耐久性が高く、崖の崩落から何十年と家を守り続けてくれます。

一方で、他の2つよりも費用が高く、資金計画が成立しないケースもゼロではありません。

また、既にRC造擁壁が組まれている土地の場合は一級建築士に崖を調査してもらい、耐久性に問題ないかを確認しなければなりません。

つまり、RC造の擁壁は安全性の高い家を建てられるものの、費用面に課題があります。

擁壁工事にかかる費用の目安と助成金

擁壁工事には多額の費用が発生することから、目安をチェックすると良いでしょう。また、自治体によっては助成金を受けられるため、ハウスメーカーに調べてもらうことがポイントです。

  • 各工法の費用目安
  • 大規模工事で利用できる助成金

順番に解説していきます。

各工法の費用目安

大谷石積み、間知ブロック積み、RC造の費用目安は、以下の通りです。

擁壁の種類 目安
大谷石積み 25,000〜50,000円/㎡
間知ブロック積み 28,000〜70,000円/㎡
RC造 30,000〜110,000円/㎡

上記の通り、大谷石積みと間知ブロック積みは比較的安価です。

しかし、建築基準法やハウスメーカーの建築許可が下りない可能性もあります。そのため、ただ土砂の流出を食い止めるための擁壁として扱うことをおすすめします。

一方、RC造による擁壁は耐久性が高いものの、費用も高額になる上に既存擁壁は許可が下りない可能性があります。

それぞれの擁壁が持つ特徴とメリット・デメリットを把握しておくことが重要です。

大規模工事で利用できる助成金

擁壁工事や大規模工事を実施する際に、自然災害で崩落するおそれがある擁壁の修繕に対して助成金がある場合があります。

擁壁を所有している人が対象で、大きなヒビやシミ、繋ぎ目のズレなどに対して上限200万円の助成金を受けられます。

ただし、擁壁を新築する場合や2m以下の擁壁は対象外となるため、注意が必要です。

※参考:宅地擁壁の支援制度(専門家派遣制度・安全対策工事に係る助成金制度)|仙台市

擁壁で起こりうる主なトラブル事例

擁壁は単独で所有するケースもあれば複数で所有するケースもありますが、どちらもトラブルが起きることがあるため、注意が必要です。

  • 境界を越えてしまった
  • 管理が不十分で危害が生じた
  • 補修工事にかかる費用分担で揉めた

擁壁で起こりうる主なトラブル事例を順番に解説していきます。

境界を越えてしまった

擁壁は大がかりな工事になるため、設置した擁壁が境界を越えてしまうトラブルが起きやすいといえます。万が一境界を越えてしまった場合、擁壁をつくり直すことになってしまいます。

擁壁を設置する前には必ず確定測量を行い、境界の位置を明確にしておくことが重要です。

管理が不十分で危害が生じた

管理を怠った結果、自然災害などで擁壁が倒壊し隣地に危害が生じることもあります。危害を与えてしまうと損害賠償を請求されるおそれがあります。

擁壁は、定期的にヒビやシミがないかをチェックし、万が一不具合があればメンテナンスをすることが必要です。

補修工事にかかる費用分担で揉めた

擁壁を複数で所有している場合、所有者全員が補修に合意しなくとも単独で修繕することも可能です。ただし、費用は共有者全員で分担することになるため、費用割合で揉めることも少なくありません。

費用分担のトラブルは既存擁壁で非常に多く発生するため、土地を購入する際には擁壁の所有者を確認しておくことをおすすめします。

擁壁のある家を建てる際の注意点

家を建てる際にはなるべく擁壁が不要な土地を選ぶほうが良いといえますが、エリアや予算によっては擁壁がある土地を選択することもあります。

ここでは、擁壁のある土地に家を建てる際の注意点について解説します。

  • 地盤の状態を調査する
  • 現行の建築基準法を確認する
  • 擁壁が適合しているか確認する

順番に見ていきましょう。

地盤の状態を調査する

まずは、家を建てる予定の土地の地盤の状態を調査しましょう。

擁壁を組む場合も、既存の擁壁がある場合も、地盤が強固であることが必須です。

確かめるために、擁壁を新設したり既存擁壁をつくり替えたりする場合は地盤調査をすることになります。場合によっては、地盤改良の費用が高くなることもあるので注意が必要です。

なお、地盤の状態はハウスメーカーに調査してもらうのが一般的ですが、ジャパンホームシールドの地盤サポートマップを活用することである程度自分でも調べることが可能です。

現行の建築基準法を確認する

建築基準法は毎年のように軽微な改正がされており、崖条例に関する条文も建築する前にチェックすることをおすすめします。

法令の確認作業は本来ハウスメーカーが行う内容ですが、既存擁壁の造り直しの場合、造成業者が把握していないこともあります。

擁壁のオーナーとしてはリスクを抱えないためにも、最新の建築基準法を確認しておくことが重要です。

擁壁が適合しているか確認する

既存擁壁を解体し擁壁を新設する場合、建築基準法だけでなくハウスメーカーや工務店のルールに適合しているか確認することが重要です。

なぜなら、ルールに適合している擁壁が既に設置されている場合、新設することなく家を建築できるからです。

数百万円単位でコストダウンできることから、できるだけチェックすることをおすすめします。

擁壁に関するよくある質問

ここでは、擁壁に関する以下のよくある質問に回答していきます。

  • 擁壁が崩れたら保険から補償を受けられる?
  • 擁壁工事がやり直しになったら追加費用はいくらかかる?
  • 擁壁の耐用年数の目安は?

順番に見ていきましょう。

擁壁が崩れたら保険から補償を受けられる?

火災保険や地震保険の補償はあくまで家屋が対象となるため、擁壁の倒壊は対象外です。

ただし、ビルドインガレージなど家屋と一体とみなされる擁壁は対象である可能性があります。

擁壁工事がやり直しになったら追加費用はいくらかかる?

擁壁工事をやり直しする場合、1㎡あたり3〜10万円になることが多いとされています。

ただし、擁壁工事にかかる期間や難易度によっても費用は変動することに注意が必要です。

擁壁の耐用年数の目安は?

国土交通省によれば、擁壁の耐用年数は、鉄筋鉄骨コンクリート造で約50年、コンクリート造は約30年とされています。

※参考:土工の耐用年数について|国土交通省

擁壁のある家はトラブル・注意点を押さえて建てよう

擁壁がある土地や新設して家を建てる場合は多くのリスクを抱えることになるため、注意が必要です。

アイフルホームは、宮城県で累計契約棟数16万棟以上の実績があるハウスメーカーです。アフターメンテナンスまでこだわっており、お客様に寄り添った家づくりを提案します。

擁壁のある家について詳しく知りたい方や家づくりでお悩みのある方は、アイフルホームにお問い合わせください。

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※金利や制度は2023年12月時点のものです。

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